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院長の思うこと

血液検査の限界

 以前にもよくあったのですが、最近2例続けて経験したので少し書こうかと思います。

 それは、事前の血液検査と手術所見が一致しないというケースです。

 一匹目の子は、貧血で来院されたワンちゃんです。

 貧血だけは血液検査で分かりましたが、それ以外に異常はありませんでした。エコー検査で出血を伴う脾臓の血管肉腫が疑われました。手術のリスクや予後がよくないことを話したうえで、飼い主さんの希望で開腹手術を行いました。

 実際開けてみると、脾臓だけではなく、肝臓にも転移しており、むしろ出血は肝臓からの方が多かったぐらいです。肝臓の崩れた腫瘍からの出血は非常に多く、ギロチン法やアルゴンレーザー等で止血を試みたのですが完全に止めることはできませんでした。

 最終的には助けることができませんでした。

 肝臓の数値に異常があればもう少し精査し、手術の実施を考え直したかもしれません。


 もう1匹の子はネコちゃんです。

 頻回に嘔吐し、食欲がなくなってきたという子です。

 触診で、腹部に塊が認識できました。腫瘍なのか異物なのか少しでも情報を得るために血液検査やレントゲン検査を行いました。結果的には、脱水以外何も異常は出ませんでした。

 急遽試験的開腹を行い、摘出できるものであれば最善を尽くしたいと思いましたが、腸間膜リンパ節や十二指腸および膵臓まで巻き込んだ腫瘍であり、残念ながら手が付けられる状態ではなく閉腹しました。

 血液検査で腫瘍を特定できることは少ないですが。腫瘍が引き起こした臓器障害を捕まえることができない場合も結構あるという事例です。


 感染症があるのに、慢性化している症例では、骨髄が疲弊して白血球の数値が下ってしまうことがあります。

 肝臓の数値も障害から時間がたってしまうと下がってしまうことが多いです。

 腎臓のクレアチニンの値も高齢で筋肉が落ちてしまっている子では腎臓が悪くても上がらないことがあります。

 血液検査は確かに重要な検査ですが万能ではありません。また、たくさんある病気の一部しか捉えることしかできません。

 これは血液検査に限らず、レントゲンなどの画像診断にも言えることです。

 ですから、ここからは獣医師の経験や勘が必要となって来るかもしれません。

 もしかしたら、今後AIの方が正確に診断できるようになるかもしれませんが。


 一方、よく動物病院で行われている健康診断ですが、前記の事実を踏まえると、異常がなくても十分に健康を担保できるものではないことが分かります。

 この子は健康ですと判断することは本当に難しいことです。

 ですから、私は健康診断とは言わず、ペットチェックという言葉を使っています。

 調べられる範囲でチェックしますというものです。異常値が出れば、続けて検査していきますが、異常値が出なかった場合でも、この子は健康ですとは言いません。あくまで数値に異常はありませんとしか言いようがないと思うからです。


 近年、血液検査機器や画像診断装置が発達し、いろんなことが分かるようになってきましたが、それらは万能ではないことを理解し、多少の数値の変動に一喜一憂することなく、動物の状態を大きくとらえ、動物にとって苦痛な状態なのかどうかということを一番に考えて、獣医師や飼い主様は観察していくことが重要だと思われます。


血液検査の限界

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