私は、先日両目の白内障手術を受けました。
仕事に影響が出てはいけませんし、動物病院を休むわけにはいかないので、1週間で両目の手術を強行スケジュールで受けました。
現在では、順調に回復しており十分な視力も出ております。
手術を受けるまで一番困ったのは病院選びでした。
初めに白内障を診断していただいた眼科で受けるつもりで、すべての検査を済ませ、手術直前まで行ったのですが、最後になって、なぜか先生と話がかみ合わず、見送ることになってしまいました。私が思っているような視力が出ない可能性があると思われたみたいです。私は、眼鏡で矯正できる程度で良いと思っていたのですが。
とりあえず、次の眼科でも話を聞こうと思い、ネット情報を頼りに行ってみました。
その病院は若い先生でバリバリやっているという感じでした。病院も大きいですし設備も整っている感じでした。ただ1回の診察ですぐに手術の予約を入れるように促されたため、もう少し時間をおいて2回目で決めるつもりで再度行ってみました。しかし、やはり看護師さんと話し合って予約を入れてくれというばかり。
とても優秀そうな先生ですが、なぜか信頼関係みたいなものが得られず、そこでの手術は断念しました。
三度目の正直を願って、もう一軒の眼科をたずねました。
ホームページを見ても、こんな設備を使って手術をしているとか、手術実績がこんなにあるとか何も書いてありません。ただ、診療時間を確認すると、週に2日手術日がありました。
医院でも動物病院でも、過剰なぐらいホームページで自院をアピールしているのが普通ですが、それを感じられない病院でしたので、少し不安もありましたが、自分の目で確かめるしかないと思い行ってみました。
第一印象は、飾りっ気のない、おっとりとした安心感がある雰囲気の病院だということでした。大きくはありませんが、人の動線を考えて上手に検査機器が配置されていました。
先生ですが、一見怖そうですが、優しい語り口で、「治りますから大丈夫ですよ」とはっきりおっしゃいました。
治ります、大丈夫ですという言葉は、我々獣医も含めて、一番言いづらい言葉です。医療に100%はありませんので、何が起こるか分かりません。治らなかった場合、訴えられることも考えられますので、一般的には、リスクも大げさに言って同意をもらうケースが多いと思います。
でもこの先生の言葉には説得力と安心感がありました。当然100%安全ではないことはわかっておりましたが、ふっと腑に落ちた感じがしました。
私は、この先生に手術をお願いすることに決め、無事終了することができたわけです。
後から気づいたことですが、この病院の施設は立派でした。あと何よりも、先生の手術方法に確信を感じました。
眼科医によって、好みの手術方法は違うと聞きますが、最近のやはりは、目尻の角膜を切開し、水晶体を吸引した後眼内レンズを入れる方法だそうです。角膜は縫合しません。
この先生の方法は、結膜から切開し、水晶体吸引後眼内レンズを入れ、最終的には縫合するという方法でした。
一見、古い方法で手間のかかる方法に聞こえますが、実は、この先生の方法は、水晶体が脱落したり、硝子体や網膜に問題が起きた時に、すぐに切り広げ対応できる方法だったんです。角膜切開では切り開いて対応することは難しいそうです。また、術後の感染の確率も低い方法だそうです。
ここに先生の確信があったのだなと実感しました。
先生は、このようなことは何も言われませんでした。私が後から勉強して知ったことです。
能ある鷹は爪を隠すとはこのことではないでしょうか?
今回3軒の眼科を回ったわけですが、いずれも素晴らしい先生ばかりでした。
何が違ったかというと、先生方のポリシーの違いというか病院経営の方向性の違いだけではないでしょうか。
どの病院がいいとか悪いとかではなく、自分がどの病院と相性が良いかというだけです。
動物病院も獣医師の考え方によって、とことん検査をし最後までしっかり治療する病院もあれば、動物や家計の負担を優先し程よい落としどころを考えながら治療する病院もあります。また得意、不得意な分野がそれぞれあります。
とことん治療してほしい飼い主さんにとっては、動物や家計優先の病院は頼りなく、技術のない病院に見えるでしょう。私も必要がないと思われた血液検査を行わなかったことで、ネットに愛情のない情けない獣医だと書き込まれたことがあります。
一方で、動物や家計優先を希望する飼い主さんにとっては、とことん治療をする病院は、お金がすごくかかる気軽に行けない病院と感じるかもしれません。
今回の経験を通じて一番感じたことは、病院の先生が良いとか悪いとか簡単に判断できるわけがないということ。
それより病院との相性が良いかどうか(ご自身の希望に合った治療をしてくれるかどうか)で判断することが、一番良い結果になる可能性が高いのではないかということです。
これは動物病院にも言えることではないでしょうか。
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