私はノンフィクションの本ばかり読む典型的な理系人間なのですが、今回、この小説を読んで大変感銘を受けましたので少しだけ紹介させていただきます。
実は、この小説の主人公は、獣医学を学ぶ女学生で、私の母校の酪農学園大学が舞台となっています。小説では北農大学という名前になっています。
中学時代に母親を亡くした後、父親の後妻と上手くいかず、不登校になってしまった主人公をおばあさんが引き取り、おばあさんの前向きな生き方に影響され、環境の全く違う北海道の大学に入ります。
自分に自信のない主人公は、北海道の雄大な自然、個性豊かな先輩や同級生、そして動物との触れ合いの中で、挫折を繰り返しながら、少しずつ成長していきます。
詳しくは書けませんが、主人公が選んだ最終的な就職先には驚きましたが納得のいくものでした。
小説の中では、主人公の心の変化や大自然が見事に表現されており、単色の文字から多くの色彩を想像させる著者の力量には感銘を受けました。
そして何よりも、私が過ごした学生時代の記憶がどんどんよみがえり、主人公の心の動きが手に取るように理解できました。
主人公が犬の解剖学実習を通して獣医師になるという決意を固めていくのですが、これは私もまったく同じで、私の場合は、牛の解剖学実習から真面目になりました。それまでは毎日パチンコ屋に通っており、ほぼ大学には行っていないという不真面目な学生でした。
我々の場合、牛の解剖をする時は、死体を持ってくるのではなく、生きた牛の頸動脈にカテーテルを入れ、その場で放血殺しておりました。牛が亡くなる直前の鳴き声が頭から離れず、藁をもつかむ気持ではないかと想像すると申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。その時私は、この牛から一つでもいいから絶対に忘れない知識を得ようと心に決めました。
このことをきっかけに私は真面目に大学に通うことになった次第です。
大学での勉強は膨大で、本当に大変でしたが、やめたいと思ったことはありませんでした。
この小説をきっかけに、あの頃のことを懐かしむとともに、意気揚々としていた自分を思い出し、初心に帰って今の仕事に生かしていきたいと思いました。
ご興味がある方は、ぜひ読んでみてください。