今、人の病院やクリニックから処方される医薬品、特にジェネリック医薬品が足りていないという信じられないことが起こっています。
そのあおりを受けて、我々動物病院も、薬が入手できない、数量が限定される、値段が急騰するなど大変困った事態になっております。
そのため、私が処方する薬の名前が変わる、値段が変動する、入荷まで待っていただくなどのご不便をおかけして大変申し訳なく思っております。
なぜこんな事態になったのか。
これは、福井県の、あるジェネリック製薬会社が製造した抗真菌剤に睡眠薬の成分が混入し、2人が亡くなるという信じられない事件が発端になっております。
これは2020年の暮れに発覚した事件で、この会社のずさんさが明らかとなりました。
その後の検査により、次々と国に提出した手順を無視した製造を行っている製薬会社が発覚し、業務停止命令や業務改善命令が出されました。
2021年2月から2023年3月までに行政処分を受けた製薬企業は12社におよびます。
そのため、製造される医薬品が圧倒的に少なくなりました。
業界団体のまとめでは、2022年5月の時点で、2516品目、ジェネリックの1/4が入手困難となっているようです。
私は、大学時代に研究の魅力に取りつかれ、卒業後は先発品を製造する大手製薬企業の研究員になりました。
獣医師の立場から、新規化合物(医薬品候補)をイヌ、ラット、マウス、ウサギおよび場合によりサルに投薬した場合の安全性を評価する仕事をしていました。
我々が動物を観察する場合は、すべての手順(GLP)が厳しく決められており、書き間違いでも理由を記載しサインするほど徹底されておりました。
また、試験中には、ランダムにQAU(社内の品質保証部門)の社員が査察に入り、我々の仕事に間違いがないかをチェックし、最終的に我々が作成した報告書に保証書を付けるといった一連の偽りのない仕事が行われていました。
その経験から、一部のジェネリック製薬会社の堕落ぶりには驚かされます。
確かに、政府が、国民医療費を抑えるために、ジェネリック移行へ強引に進め、それにジェネリック製薬会社が追いつけなかったことが大きな原因になっていることは間違いないでしょう。
国民の健康を守るための医薬品が、国の強引な政策や製薬会社の堕落によって、事故につながったり、品薄になったりするのはもってのほかではないでしょうか。
動物たちも、その被害の一部をこうむっています。
皆様には、まだしばらくこのような事情により、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうぞご理解をお願いいたします。
